職場の「お局さん」との付き合い方。敵にも味方にもなれる人と、どう生きるか

仕事

入社して3ヶ月が経ったころ、先輩から小声で言われました。

「Aさんには気をつけてね」と。

Aさんは入社15年目、40代の女性社員です。会社のことを誰よりも知っていて、気が強くて、新人の仕事にも細かく口を出してくる。ランチは固定のメンバーと行き、気に入らない相手には冷たい。社内では「お局さん」と陰で呼ばれていました。

その話を聞いた私は、「関わらないようにしよう」と思いました。でも小さな会社で、同じ部署にいる。関わらないなんて、不可能でした。

最初の半年間:とにかく怖かった

Aさんは確かに怖い人でした。資料の提出が少し遅れただけで、「前にも言いましたよね」と冷たく言われた。メールの文面が気に食わなかったのか、全文を赤字で直されて返ってきたこともある。新入りの私には、何が正解かもわからないまま、ただ地雷を踏まないように歩いているような毎日でした。

一番しんどかったのは、Aさんの機嫌が読めないことでした。昨日は普通だったのに、今日は挨拶しても無視される。理由がわからないから対処のしようがない。「私、何かしたかな」と帰り道にずっと考えて、家に帰っても引きずる。そういうことが何度もありました。

転機:Aさんが私を助けてくれた日

入社8ヶ月目のことです。私が担当していた書類に大きなミスが見つかり、取引先への対応が必要になりました。上司は外出中で、連絡がつかない。私はパニックになっていました。

そのときAさんが「どうしたの」と声をかけてきた。状況を説明すると、素早く状況を整理して、対応の順番を教えてくれて、必要な電話のかけ方まで一緒に考えてくれた。「こういうときは焦っても仕方ない。まず謝罪、次に代替案、それだけ」と言いながら、私が電話をかけている間、横で見守っていてくれた。

その日の帰り際、Aさんに「ありがとうございました」と伝えたら、「次は自分で対処できるようにしときなさい」と言われました。厳しい言い方だけれど、怒っているわけじゃない。そのことはわかりました。

Aさんのことが、少し違って見えた瞬間でした。

「お局さん」という言葉の問題

ここで少し立ち止まって考えたことがあります。「お局さん」という言葉そのものについてです。

この言葉は、職場に長くいる中高年の女性社員に対して、やや揶揄的なニュアンスで使われます。気が強い、口うるさい、新人をいじめる——そういうイメージがセットになっている。でも考えてみると、同じ行動をしている男性社員に「お局さん」という言葉は使いません。長く勤めていて、意見が強くて、職場のルールを守らせようとする。それが男性なら「ベテラン社員」で、女性なら「お局さん」になる。

Aさんが気が強くて口うるさいのは事実です。でも彼女が15年間この会社で積み上げてきたものがあって、自分なりの仕事への信念があって、その上での言動だということも、少しずつわかってきました。「お局さん」という一言でまとめてしまうと、そこが見えなくなる気がしています。

Aさんが求めていたのは「敬意」だったと気づいた

付き合い方が変わってきたのは、ある気づきがあってからです。

Aさんが冷たくなるとき、機嫌が悪くなるとき、そのパターンを観察していたら、ひとつの共通点があった。「自分の仕事や知識が軽く扱われたと感じたとき」に、Aさんは閉じていく気がしました。

逆に、「Aさんに聞かないとわからないことを、ちゃんとAさんに聞く」「Aさんが教えてくれたことを、ちゃんと実践する」「確認を怠らない」——そういう姿勢を見せると、Aさんの対応が明らかに変わりました。

難しいお客さんへの対応について「Aさんはどうやって対処してきたんですか」と聞いたとき、Aさんは30分近く話してくれました。経験に基づいた具体的な話で、本当に勉強になった。そして帰り際、珍しく「なゆたちゃん、最近仕事の飲み込み早くなったね」と言ってくれた。初めて褒められた瞬間でした。

Aさんが求めていたのは「媚び」じゃなかった。自分の経験と仕事への姿勢に対する、誠実な敬意だったんだと思います。

それでも、全員と分かり合えるわけではない

ここまで書いてきたことが、すべてのお局さん的存在に通用するかというと、そうは思っていません。

職場には、どんなに誠実に向き合っても、一方的に攻撃してくる人がいます。新人をターゲットにして、理由のない嫌がらせを続ける人も、残念ながらいる。それはもうAさんとは別の話で、「向き合う」より「距離を置く」「上司や人事に相談する」という対応が必要な場合もあります。

「お局さんとうまくやるべき」という話をしたいわけじゃない。ただ、最初から「怖い人・避けるべき人」と決めつけてしまうと、その人が持っている経験や知識という資産に、一切アクセスできないままになってしまう。それは少しもったいないかもしれないと思っています。

ベテラン社員との付き合い方で、私が学んだこと

Aさんとの3年間を振り返って、今思うことを正直に書きます。

Aさんは今も怖いです。機嫌の波もある。でも、会社の裏事情・取引先との歴史・過去にあったトラブルの経緯——そういう「会社の記憶」を一番持っているのはAさんで、私が何度か助けられたのも事実です。社内で誰が信頼できて、誰が信頼できないかも、Aさんの観察は鋭い。

職場のベテランは、使い方を誤ると障害になるけれど、うまく関係を作れると、教科書には載っていない知識を持つ先生になる。そのことを、Aさんが教えてくれました。

敵にも味方にもなれる人と、どう生きるか。それは結局、相手をひとりの人間として見ることから始まるんじゃないかと、今の私は思っています。

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