金融庁の報告書として大きな話題になった「老後資金は2,000万円必要」問題。そんなに貯金できないし、投資でコツコツ増やさないとまずいけど、NISAってなんだか色々あるな?違いはなんだろう?ということで、今日の話題は「NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの違い」です。
NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの違い
まずは違いを比較してみましょう
ジュニアNISA | NISA (一般NISA) | つみたてNISA (積立NISA) | |
対象 | 〜19歳 ※親権者が代行 | 20歳以上 (本人) | 20歳以上 (本人) |
運用方法 | 15% | 通常購入・積立 | 積立 |
年間投資枠 | 80万円 | 120万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年 | 5年 | 20年 |
投資可能期間 | 〜2023年 | 〜2023年 | 〜2037年 |
非課税総額 ※最大 | 400万円 | 600万円 | 800万円 |
投資対象 | 株式・ETFなど | 株式・ETFなど | ETF・投資信託のみ |
引出制限 | 18歳まで制限 | なし | なし |
この表では実際にどれを選べばよいのかわかりませんね。違いを深掘りしつつ、どれがお得なのか考えていきましょう。
利益が非課税となり、非課税期間も長い
たとえば投資で得られた利益を10万円とします。
このうち20.315%が税金として取られてしまいますので、あなたの手元に残る利益は79,685円、つまり税金として2万円以上が差し引かれ8万円弱となってしまいます。
同じように投資で10万円の利益が出た場合、10万円全てが手元に残ります。
少額から積立可能、まとまった資金がなくても始められる
金融機関にもよりますが、たとえば楽天証券なら月100円と少額から始める事ができます。ちなみに上限は月33,000円で、限度額いっぱいまで積立することもできます。また積立はいつでもストップする事ができ、続けやすくなっています。
自動積立で手間いらず、難しい買付タイミングの判断も不要
積み立てる頻度は、「毎日」「毎週」「毎月」、あるいは「年に2回」でもOKです。実際には金融機関によって、選べる積立サイクルは変わってきますが、どの金融機関でも「毎月」の設定が可能です。
一度設定してしまえば、いちいち買い付け注文をしなくてもよいので、初心者でも“楽”に投資できます。また、買い付けタイミングの判断は投資のベテランでも判断が難しいのですが、買いのタイミングを判断する必要がないことは初心者にとって大きなメリットとなります。
投資の初心者でも銘柄を選びやすい
つみたてNISAを利用できる対象商品は約160本です。これらの商品は金融庁の厳しい条件をクリアした厳選された銘柄となっており、市場に出回っている明らかに購入者にとって不利な銘柄は除外されています。あらかじめ選択肢が絞り込まれていることは、特に投資初心者にとって大きなメリットでしょう。
積み立てた資産は、売却して換金できる
NISAやつみたてNISAでの投資で購入した商品を売却することで、いつでも現金化し払い出す事ができます。「住宅資金」「教育資金」「老後資金」「余暇資金」など様々な目的で積み立て、引き出せるということです。
もしiDeCo(個人型確定拠出年金)であれば、原則として60歳まで引き出すことができません。しかも積立期間が10年以上ないと、60歳であっても引き出せません。
また、ジュニアNISAでも制限があり、18歳までは非課税で払い出しができません。
長期の積立投資なら利益を出しやすく損しにくい
「つみたてNISA」は積立投資に特化した制度です。積立投資をすると、「ドルコスト平均法」の効果が期待できます。
上記の例では株価が高い水準の時に一度に購入した場合に比べ、株価が低い水準も含めて少しずつ投資信託を購入した方が、最終的な保有口数は多くなります。この例は少し極端ですが、つみたてNISAには一度に購入できる選択肢がありません。
年齢上限なし
NISAもつみたてNISAも、20歳以上の国内居住者ならだれでも開設でき、利用できる年齢の上限がありません。そのため、60歳以上の方でも、つみたてNISAを活用する事ができます。
先ほどのiDeCoでは加入できる年齢は20歳以上60歳未満という制限があります。
所得控除などの点ではiDeCo独自のメリットもありますので、積極的に使い分けていきたいものです。
つみたてNISAにはデメリットがあるの?
含み損で課税口座に移るとその時価を取得価格として計算される
これはつみたてNISAに限らずNISAでも同じことですが、つみたてNISAの非課税期間が終わり、その期間で値上がりした分については課税口座に移るタイミングで新しい取得価格となります。
上記の例で言うと、当初の購入価格120万円が新しい取得価格150万円になっても、差額30万円については課税されないでということです。これはメリットですね。
一方で、購入価格より新しい取得価格が下がっていたケースではどうでしょう。
この例では購入価格120万円より値下がりしたため、課税口座に移るタイミングで取得価格が100万円になりました。
するとその後、130万円に値上がりした際は、新しい取得価格100万円との差額30万円が課税されます。もともとの購入価格は120万円ですから、本来は10万円しか課税されなかったのに・・・となってしまいます。
このように、含み損を抱えたまま課税口座に移ると、その時価が新たな取得価格になってしまうので注意しましょう。
つみたてNISAは非課税期間20年間なので、保有し続けた状態で20年後に含み損になっているケースは考えにくいのですが、万が一として認識しておく必要があります。
一括購入は不可、積立のみ可能
つみたてNISAは、その名の通り積立しか選べないので、一度に大きな金額で買う事ができません。
一方、通常のNISAは一括購入も積立も可能です。
とはいえ、投資の初心者の方はそもそも積立を目指してつみたてNISAを選んでいる方も多いと思います。
選べる銘柄が限られている
つみたてNISAの対象である投資信託・ETFは160本程度と厳選されている分、選べる銘柄が限られています。
たとえば、リスクを抑えようと思って債券100%の投資信託を選ぼうと思っても、現状つみたてNISAの対象銘柄に入っていません。
とはいえ、つみたてNISAでは長期的に保有することがお得な投資信託が厳選されていますから、このデメリットは単に自由に銘柄が選べるわけではないという程度に捉えるとよいでしょう。
非課税枠の再利用ができない
つみたてNISAは年間40万円の非課税枠があります。この枠は使いきりとなっており、その年に購入した投資信託を年内に売却し、空いた枠を再利用する事はできません。売却せずにひたすら積み立てるのであれば気にする必要はありませんが、念のため覚えておきましょう。
また、年間の非課税投資枠の未使用分は、翌年以降、繰り越せません。
特定口座との損益通算ができない
普段使用する特定・一般口座とつみたてNISA口座での損益通算はできません。また、確定申告による損失の繰越控除(3年間)もできません。
つみたてNISAは長期保有を狙いとした制度ですので、仕方ないのかもしれません。
使える金融機関は1つのみ
NISA口座やつみたてNISA口座は、1人1つしか作る事ができない上、同じ年に同時利用もできません。もし既にNISA口座を開設している人は切り替えのための手続きしないと、つみたてNISA口座が使えません。気をつけましょう。
ちなみに、つみたてNISAに限らず、口座を開設する金融機関は、ネット証券にすることがベターです。私は楽天証券やSBI証券を使ってますが、手数料が安く、ポイントも貯まるため、自信を持っておすすめします。
当初は私も地方銀行でNISA口座を開設していたのですが、楽天証券に移す際にかなり手間がかかり、1ヶ月ほど時間も必要ですので、最初からネット証券を選ぶとよいでしょう。
つみたてNISAを利用する方がよい?
これまで、つみたてNISAのメリットとデメリットを改めてまとめました。その上で結論は、つみたてNISAはおすすめできる制度だと言えます。
たしかに普通の口座と比べれば融通が利かないというデメリットはあるものの、つみたてNISAの制度上はやむを得ない部分が多いと思えます。
一方、利益が非課税で、さらにその非課税期間も長く取れるというのは大きなメリットです。特に投資初心者はコツコツ積立していくスタイルが向いていますので、つみたてNISAは相性が良いと言えるでしょう。
また、ネット証券を使えば、つみたてNISAでの投資信託・ETF購入に手数料不要となることが多いのです。これはつみたてNISA口座を利用する上で、普通の口座と比べ、見えないメリットと言えるかもしれませんね。
つみたてNISAを利用するとどれくらいお得になる?
つみたてNISAの最大のメリットである非課税とは、どれくらいお得になるのでしょうか?
おおよそですが、直近10年で、日本を代表する株価指数である日経平均、または世界を代表する株価指数であるMSCI ACWIに連動する投資信託へ投資した場合、それぞれ約20%、10%以上の利益が出ていたことになります。
もし、つみたてNISA限度額の年40万円を10年間積み立てた場合、投資金額はトータル400万円、利益が10%出たとすると40万円になります。通常の口座であれば税金が8万円以上取られてしまうことになります。
これは大きな差だと思いませんか?
まとめ
つみたてNISAはお得な制度ですが、メリットだけではありません。これから始められる方はデメリットも把握し、「そんなの聞いてないよ・・・」と後悔することがないようにしましょう。
特に、どこで口座を開設するかはとても重要ですので、慎重に検討することが必要です。