新型コロナウイルスCOVID-19の特徴と対策、報道について

新型コロナウイルスCOVID-19は今もっとも世界を賑わせているニュースだ。その症状は発熱、全身倦怠感、乾いた咳などがあり、入院患者では呼吸困難や胸の圧迫感も多いが、発熱せずに死亡した例もあり、注意は禁物だ。経済減速への影響も心配される中、日本ではさほど騒がれていない。この理由について見ていこう。

発生からこれまでの時系列

まずは今回の新型コロナウイルスCOVID-19について、一連の流れをおさらいしておこう。

  • 2019年12月8日 中華人民共和国 湖北省 武漢市の保健機関より、原因不明の肺炎患者が初めて報告
  • 2019年12月31日 WHOへ初めて報告
  • 2020年1月7日 原因がコロナウイルスであると判明
  • 2020年1月9日 最初の死亡者が発生
  • 2020年1月13日 中国国外での感染例としてタイで発生
  • 2020年1月16日 日本で最初の感染例
  • 2020年1月29日 中国全土で感染が確認
  • 2020年1月31日 WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言
  • 2020年2月4日 大黒ふ頭でダイヤモンドプリンセスが日本政府指示で2週間の隔離措置開始
  • 2020年2月8日 武漢で60代の日本人男性1名が新型肺炎により、日本人で初めて死亡
  • 2020年2月11日 WHOがウイルスをCOVID-19として命名
  • 2020年2月15日 東京都内港区のIT企業オフィスで感染者が発覚
  • 2020年2月18日 東京都内大田区内の病院で感染した医師の家族(20代含む)へ感染者が発覚、当該病院が閉鎖

症状は発熱、全身倦怠感、乾いた咳などが多い。しかしコロナウイルスによる死亡例では肺に穴があくほど、体内で免疫が過剰反応する死亡例もあるようだ。

また、当初は比較的高齢の感染者が多かったが、次第に若い人にも感染例が報告されるようになったのは気になる点だ。

SARSの死亡率がおよそ9%であることと比較すると、死亡率は3%から4%と、SARSよりも低いとみられている。これは2015年にイギリスを中心にヨーロッパで発生したMERSと比べても同様の傾向だ。(もっとも、MERSもコロナウイルスに属するが、SARSや今回の新型コロナウイルスとはやや遠縁である。)しかし、感染者はSARSやMERSよりも多く、猛威を振るっていることには違いない。

新型コロナウイルスCOVID-19の特徴

by: Daniel Wrapp et al., Science (2020)
by: Daniel Wrapp et al., Science (2020)

新型コロナウイルスCOVID-19の遺伝子が1月に解析されていたが、既に存在する抗体の投与が有効であるかといった、治療の有効性については不明だった。現地の2020年2月19日、Science誌にてウイルスが人体の細胞に侵入するための重要なタンパク質の構造解析が発表された。

この論文の著者らは、2010年ごろから格段に進歩したCryo-EM(低温電子顕微鏡法)を用いた分析方法により、細胞に取りつくためのウイルスの表面タンパク質を分析した。Cryo-EM解析ではNMR(核磁気共鳴法)やX線結晶構造解析のように原子レベルでの構造は不明だが、タンパク質のような大きな分子の概形を知るためには、迅速に行うことができ有用な方法だ。

分析結果によれば、新型コロナウイルスCOVID-19が人間の細胞に取りつくための表面タンパク質は、SARSと概形がよく似ている。特に、人体の多くの器官の細胞表面に広く存在するACE-2(アンジオテンシン変換酵素II)と結合するための部位は、SARSと非常によく似ていることがわかった。

COVID-19の表面タンパク質はSARSのそれよりもヒト細胞表面ACE-2と結合しやすいという特徴があり、COVID-19はSARSよりもウイルスの感染力が強いかもしれないと示唆されている。

また、SARSでは治療に有効だった抗体については、抗体の結合部位がSARSと異なっており、同じ抗体では効果が見られないということもわかった。そのため、治療に用いる抗体はSARSと異なるものを使わなければならない。

Science誌の記事はこちらだ。

Cryo-EM structure of the 2019-nCoV spike in the prefusion conformation
The World Health Organization has declared the outbreak of a novel coronavirus (2019-nCoV) to be a public health emergency of international concern. The virus b...

感染についての報道での扱い

実は感染についてさほど日本では派手に報道されているわけではない。

新聞の一面を毎日飾ることもなければ、外出の自粛を求められるわけでもない。ただ、どこもマスクが売り切れているという現象が見られるだけだ。

いったいなぜ日本では新型コロナウイルスがさほど騒がれないのだろうか?

1番目の理由はどこか他人事のように扱ってしまうという現代日本人の気質だ。隣人に興味をが薄くなったこのご時世、まして隣の国や隣の県で感染者が出ても大きく騒がない。もちろん、何にでも過剰反応する国もあり、どちらがいいという気は毛頭ない。

2番目の理由は前例を経験したということだ。2002年から2003年にかけて出現した新型コロナウイルスSARSの時も、いつの間にか出現し、いつの間にか収束していたという安心感があるのだろう。おまけに致死率もSARSほどではないから、さほど大きく取り上げられないのも仕方ないだろう。

3番目の理由は意外と人々が冬になると対策をしているという点だ。冬になれば毎年のようにインフルエンザが流行するから、必然的にウイルス感染には敏感になる。手洗いやうがいはもちろん、マスクの着用により毎年のように対策を行なっている人も多い。

もっとも当方の調査によれば、今年の冬はマスクの着用が昨年より増えたという人が15%以上増えており、人混みでは必ずマスクを着用するという人も10%近く増加している。(調査対象は関東圏。)そのため、報道でそれほど騒がれていなくても、人々はかなり敏感になっているようだ。

今後の見込み

今回の新型コロナウイルスCOVID-19は今後どのようになっていくのだろうか。

最も想像しやすい、そして望まれているのはいつの間にか収束しているというものである。春になり温度や湿度が上がることで、ウイルスの飛散が減り、感染者も次第にいなくなるというシナリオだ。

毎年のインフルエンザのように、あるいはSARSがそうだったように、時が経つにつれ収束していくだろうという見込みである。しかし、その収束はいまだ見えず、インドでは2020年6月になってもまだまだ感染が広がっている。

経済関連への影響も次第に減っていくと考えられている。実際、多くの経済評論家は市場反応ほど悲観的な展望を持っておらず、むしろ政府の経済緩和・経済刺激のための施策が確実に行われると予想している。影響でいえば、むしろ経済刺激のための政策が市場の期待を下回るものであった時の方がショックは大きいだろう。

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