11月になるとボージョレー・ヌーボーの時期がやってきます。いっときよりブームは下火になったとはいえ、相変わらずボージョレー・ヌーボー解禁が近づくとワイン好きの中では必ず話題に上がりますよね。毎年のように傑作のようなキャッチコピーがつきますが、今年は一体どのような出来になっているのか、味わってみましょう。
ボージョレー・ヌーヴォーとは?
Beaujolais nouveauは、日本語では「ボージョレ・ヌーヴォー」などの記載になります。表記の揺れで「ボジョレ・ヌーヴォー」「ボジョレー・ヌーヴォー」などと書かれることもあります。
Beaujolaisとはフランス・ブルゴーニュ地方にあるボジョレー地区を指しており、nouveauはフランス語で「新しいこと」「新しいもの」を表します。つまり、ボジョレー・ヌーボーとは、「ボジョレー地区の新酒」という意味になります。ワインとしては、9月ごろにボジョレーで収穫されたブドウを、2カ月で若飲み用に仕込んでいるため、果実風味の強いフレッシュな味わいに仕上がります。
ボジョレー・ヌーボーがこれほど注目され有名になったのには理由があり、同じ年のブドウの出来栄えの指標になるからです。新酒のボジョレー・ヌーボーは、通常とは異なる醸造法により短期間で造られるため、ブドウの質がワインの味わいに直結します。そのため、ボジョレー・ヌーボーの出来が良いと、その年のブルゴーニュ地方のワインも期待できるということになるのです。
一般的なワイン製法は、収穫したブドウを樽やタンクに入れじっくり熟成させます。ボジョレー・ヌーヴォーの場合、「マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸潤法)」という特殊な方法を用い、短期間で仕上げます。収穫したブドウを、密閉式のステンレスタンクの中に入れ、ブドウのアルコール発酵により発生した炭酸ガスの中に数日間置くのです。
この方法では、短時間であざやかな色素の抽出ができる、ブドウの種に含まれる「タンニン」という渋み成分がワインとしては少なくなります。そのため、フレッシュで軽い飲み口のワインに仕上がります。ワインが苦手な人にも飲みやすくなるというわけです。
過去のボジョレー・ヌーヴォーの出来具合
ボージョレ・ヌーボーといえば、毎年様々な品質予想やキャッチコピーが出回ることで有名ですね。まずは今年の品質予想を確認してみましょう。
今年のワインは、天候が悪かったにもかかわらず「期待できるビンテージ」だそうです。「葡萄のフレッシュさ」に溢れ、「糖と酸がバランスよく」整い、「熟成の可能性は魅力的で、ワインも光っていくであろう」
天候が悪く収穫量は減りますが、8・9月には気温が上がったことで品質は良く、生産者の腕が問われるとしになりました。
過去の品質予想と評価と比較してみましょう。
年 | ボジョレーワイン委員会による品質予想 | 販売業者等の評価 |
2012 | 心地よく、偉大な繊細さと複雑味のある香りを持ち合わせた | 偉大な繊細さと複雑な香りを持ち合わせ、心地よく、よく熟すことができ健全 |
2013 | 繊細でしっかりとした骨格。美しく複雑なアロマ | みずみずしさが感じられる素晴らしい品質 |
2014 | エレガントで味わい深く、とてもバランスがよい | 太陽に恵まれ、グラスに注ぐとラズベリーのような香りがあふれる、果実味豊かな味わい |
2015 | 記憶に残る素晴らしい出来栄え | 過去にグレートヴィンテージと言われた2009年を思い起こさせる |
2016 | エレガントで、魅惑的なワイン | 若々しく豊かなストロベリーを想わせるジューシーな果実味 シナモンのような甘いスパイス風味が感じられる、フレッシュな飲み口 |
2017 | 豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい | 今世紀最高と称された2015年を思い起こさせる しかも、一層溌剌としていて、優美さという点でもレベルが高い |
2018 | 2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれる | 理想的な条件の元、素晴らしいヴィンテージへの期待高まる |
例年魅力的なキャッチコピーがつけられる一方、ボジョレーワイン委員会が行う品質予想はとても控えめなものがあります。特に重要なのは、過去の年度と比べているコメントであり、その年のブドウの出来具合には注目が集まります。
2018年のコメントでは過去に出来が良かった年に並ぶ評価であり、ここ数年の中でもかなり良い出来となっていました。
ボジョレー・ヌーボー2019の感想
こちら解禁日の20時ごろにお店で飲んだ時のテーブルの様子です。それなりに飲み進んた頃なので、大好きなアヒージョとともに、飲んでいますね。一人で飲むときもデカントくらいは頼んでしまう私はただののんべえなのかもしれません。
肝心のワインの感想ですが、「フルーティな香りが新鮮さを感じさせ、飲みごたえはあるがほどよい主張をする出来」です。飲み口はそれほど軽くなく、風味は十分にありますが、一緒に食べる料理を引き立てるような印象です。
一般に赤ワインといえば肉料理と合わせることが多いのですが、ボージョレ・ヌーヴォーは渋みが少なく新鮮さがあるので、肉のような濃い味には負けてしまいます。むしろ日本的な控えめの味付けの魚と合わせるのが良いのではないでしょうか。特に白身魚や青魚の中でも、季節的にはコハダを据えて飲みたいものです。
私個人の感想では、総合的には2018年ほどの出来ではないものの、「フルーティさ」や付け合わせのワインとしての魅力など、いくつかの点では決して劣らない出来だと思っています。
まとめ
美食家にとって、ワインは解禁日に飲むのが粋というものです。ボジョレー・ヌーボーに限らず、日頃からチェックしてみてくださいね。