それなりにビジネスに明るい人間なら「GAFA」や「FANG」といった言葉は聞いたことがあるだろう。それらは世界に大きな影響を与えている巨大IT企業の総称であるが、実は「GAFAはもう古い」ということはご存知だろうか?ここでは改めてこれらの企業やその総称について紹介していこう。
GAFAとは
GAFAとは、アメリカの巨大IT企業4社の頭文字をとった略語だ。世界中で巨大IT企業によるデジタル経済の支配が強まっていることで、ここ数年かなりの注目を浴びている。
後述するように、GAFAとはたった4社から成るにも関わらず、その規模は先進国のGDPに並ぶほど大きく、影響度は計り知れない。
また、GAFAという用語はかなり以前に現れたものであり、最近はより別の呼び方で別の企業群を指すようになった。
GAFA関連の略語
GAFA
タイトルにもなっているGAFAとは、「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」の4社の略だ。いずれも実質的にアメリカを主な拠点としており、ITによる各種サービスの共通基盤になるインフラを提供している巨大事業者であり「ITプラットフォーマー」である。
GAFAという名前の初出は2011年ごろだと考えられているが、日本の経済産業省のレポートなどに出てくるようになったのは2016年ごろからだ。
GAFMA
GAFMAとは、GAFAの「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」に「Microsoft」を加えた5社の総称だ。いずれも実質的にアメリカを主な拠点としており、ITによる各種サービスの共通基盤になるインフラを提供している巨大事業者であり「ITプラットフォーマー」である。
FANG
FANGは2015年に提唱された、「Facebook」「Amazon」「Netflix」「Google」の4社の総称だ。ただしこの名前は1年後に提唱者自身により改められることになる。
FAAA
FAAAは2016年にFANGに変わる概念として提唱された、「Facebook」「Alibaba」「Amazon」「Alphabet」の4社の総称だ。「Alibaba」は中国最大のネットショップ、「Alphabet」はGoogleの親会社にあたる。
BAT
BATはこれまでの系統と異なる企業集団であり、「Baidu」「Alibaba」「Tencent」の3社の総称だ。いずれもインターネット関連の企業で、中国の最大手3社である。サーチエンジン運営のBaidu(バイドゥ)、ECサイト運営のAlibaba(アリババ)、メッセンジャーアプリ開発のTencent(テンセント)を指している。2010年代を牽引した中国企業で、2011年ごろから呼ばれるようになったようだ。
TMD
2018年には中国関連でBATはもう古いと言われており、TMDと呼ばれる「Toutiao」「Meituan-Dianping」「Didi Chuxing」の3社が注目されている。いずれもインターネット関連の企業で、中国の次代を担うと言われている3社だ。ニュースサイト運営のToutiao(トゥティアオ)、生活サービスや共同購入のMeituan-Dianping(メイトゥアン)、配車アプリのDidi Chuxing(ディディチューシン)を指している。こちらは2017年ごろから呼ばれるようになったようだ。
GAFAはなぜ恐れられるのか
GAFAに共通するのは、市場の変化をとらえた戦略を大胆に編み出していくビジネスモデルである。GAFAはインターネットという市場を貪欲に開拓した。検索エンジン・音楽配信・SNS・eコマースなどの領域に進出するに止まらず、新しい稼ぎ方をいち早く見いだし、市場を刈り尽くしていった。
対極にあるのが日本のビジネスモデルだ。日本の主要な企業は、品質の高い製品を提供する管理能力には優れていたが、これまでのビジネスモデルにとらわれ、新しい領域では遅れをとるに至ってしまった。
この差は時価総額の違いを見れば歴然だ。GAFA4社の時価総額の合計は2019年末時点で300兆円となっており、これら4社だけでも日本のGDPの50%を上回っている。日本企業の時価総額トップ4は、上からトヨタ、ソフトバンク、NTTドコモ、NTTであるが、これら4社を足し合わせたところで50兆円程度だ。その規模の大きさはもはや別次元であることがわかるだろう。
これだけ大きい企業群とばれば、その影響度は計り知れない。今や様々なサービスのプラットフォームとなっており、そのサービスにアクセスするだけで多くの企業や商品の情報を得られるという点で、消費者にとっては便利で分かりやすいことは間違いない。しかし、サービスを提供する企業や開発者にとっては、公平な競争環境と言えないのではないかという懸念が生まれている。