FX(外国為替証拠金取引)の基本

FX(外国為替証拠金取引)とは?

外国為替証拠金取引とは、証拠金(保証金)を業者に預託し、主に差金決済による通貨の売買を行なう取引のことであり、「FX」「通貨証拠金取引」「外国為替保証金取引」と呼ばれることもあります。FXという単語は「Foreign eXchange」の略称であり、元々は「外国為替取引」のを指していましたが、現在では外国為替証拠金取引を指します。日本では外国為替証拠金取引をFXと呼ぶことが多い一方、海外ではForex (FOReign EXchange) と呼ばれることが一般的です。また、日本では投資商品として、外国為替証拠金取引(FX)と差金決済取引 (CFD) が異なるように分類されますが、実際には外国為替証拠金取引は差金決済取引の一種です。

日本では1998年に外国為替及び外国貿易法が改正されたことで、ダイワフューチャーズ(現・ひまわり証券)、豊商事などが取扱いを開始し、インターネット普及が急速に広がったことでFX市場も急拡大しました。証券会社・商品取引員のほか、FX取引を専業で取り扱う外国為替証拠金取引業者も多くあります。取引方法によって非常に高いリスクを負うことになるため、取引を行うにあたっては外国為替相場に関する十分な知識や経験が必要です。

FXの特徴

外国為替証拠金取引には、外貨預金・外貨建てMMFなど、他の外貨建て金融商品と比較して、以下の特徴があります。

  • 多くの外貨建て商品では、外貨を「買ってから売る」という取引になる。外国為替証拠金取引では逆に外貨を「売ってから一定期間後に買い戻す」ことが可能。
  • 日本円(JPY)しか持っていなくても預託資金(投資資金)はあくまで証拠金であるため、取引の損失を出すために日本円で支払いが可能。つまり、「米ドル(USD)を売りユーロ(EUR)を買う」という取引も可能になる。
  • レバレッジを利用することで証拠金の何倍もの外貨を取引することができる。そのため証拠金以上の損失を受けることもある。
  • 株式現物取引とは異なり差金決済のため預託金拘束がなく、同一通貨を何回でも取引できる。
  • 売相場と買相場の差(スプレッド)が他の金融商品に比べて小さい。例えば、電信買相場(TTB)と電信売相場(TTS)の差に比べると、FXの平常時のスプレッドは1/10未満である。つまり取引コストが他の商品よりも有利。
  • 通貨ペア間の金利差によるスワップポイントは、他の金融商品より有利な場合が多い。
  • 法律上は先物取引として規制を受けるものの、取引の仕組みからは先物取引とは言えない。取引形態の観点からは先渡取引に該当する。
  • 取引単位が店頭取引については各社で異なっており単位表示に注意が必要。
  • 取引時間やスプレッドは各社で異なる。

FXの詳細

FXは、1998年の外為法(外国為替および外国貿易法)改正により可能となった取引です。その後、2005年7月に施行された改正金融先物取引法、2007年9月に施行された金融商品取引法の適用を受け、外国為替証拠金取引はより公正で透明性の高い取引となりました。

証拠金取引とは、「ある金融商品を取引するにあたり本来想定される総代金に対して、リスク割合を勘案して計算された一定の証拠金(保証金)を取引業者に預託し、主に差金決済による金融商品の売買を行う取引」を指します。FX取引の場合は、通貨売買取引の証拠金取引ということになります。

ポジション

取引すると「ポジション」を持つことになります。USD/JPYペア(米ドルと日本円の通貨ペア)で「買い」を入れるとはUSD買/JPY売の取引です。これは外貨両替所でいう円からUSDへの両替みたいなものです。一方、「売り」ポジションとはUSD売/JPY買の取引で、「買いの逆」です。

「ポジション」は取引の結果生じた残高とも言えます。また、ポジションのことを「建玉(たてぎょく)」や「玉(ぎょく)」ということもあります。取引では必ずこの数量からという「取引単位」があり、FXや先物オプションの世界では1取引単位を建玉や玉ということに由来します。

ポジションは買いまたは売りを「解消する取引」を行うことで閉じることができます。「買い」ポジションを閉じるには、買いと逆にUSD売/JPY買の取引を行うわけです。FXは差金決済という方法で決済され、損益は基軸通貨(国内業者ならば円)で、利益が出れば受け取り、損失であれば支払いが確定します。

通貨ペア

FXでは「買い」の方の通貨をロング、「売り」の方の通貨をショートと呼びます。2つの通貨のペア間の比率の変動を取引の対象となるため、常に何らかの通貨を売り、同時に何らかの通貨を買うことになります。通貨のペアは USD/JPY、EUR/JPY、EUR/USD などと通貨ペアごとの表記が決まっており、「JPY/USD」などと書くことはありません。右側の通貨が基準となる通貨となっており、左側の通貨を右側の通貨で売買した場合の数値が取引レート(通貨レート)です。たとえばUSDを買って円を売る場合はUSD/JPYのロングと言います。

一般に、報道機関が「円が上昇した」と報道する場合は「円高」という意味ですが、FXで「ドル円が上昇した」というときは「円安ドル高」を意味し、正反対の意味になるため注意が必要です。

証拠金とレバレッジ

必要証拠金(単に証拠金ともいいます)は新たな取引・注文をする場合や、ポジションを維持するために必要な金額です。 取引金額の想定元本に、必要証拠金率を乗じた金額が必要証拠金となります。(個人口座では一律4%、法人口座は通貨ごとに違います)

個人口座に対する証拠金4%というのが、最大レバレッジが25倍(=4%の逆数)という根拠になります。もちろん4%というのは証拠金として最低限必要な金額ですので、口座により多くの金額を入れておいてもかまいません。例えば証拠金が10%となるよう取引すればレバレッジは10倍(=10%の逆数)になります。これが「レバレッジを下げる」の意味するところになります。

値洗いと追加証拠金

市場の為替レートは常に変動しています。法令上、外国為替証拠金取引では、必要最低保証金額が日々維持されているか、実勢価格で損益を毎日確認することが求められます。実勢価格で損益確認することを値洗いといい、国内業者では日本時間の午前6時から午前7時ごろに行われています。もし必要金額を満たさなかった場合、不足分の金額(追加の保証金)を期限までに預け入れることが必要となります。

つまり、値洗いの結果、必要な証拠金に満たない場合は、追加証拠金(追証)として差し入れる必要があるということですね。

上場取引と店頭取引の違い

一般にデリバティブ取引は上場取引と店頭取引に分けられます。

上場取引はトレーダーと取引所との取引です。トレーダーは取引所で提示されるレートで市場と取引をします。トレーダーの注文はブローカーを通じて市場(取引所)に発注されます。

一方、店頭取引はトレーダーと特定の相手との取引です。トレーダーはブローカーが紹介する特定の業者やトレーダーと取引を行います。その取引価格はお互いが納得する価格で行われます。

FX(外国為替証拠金取引)は、基本的に店頭取引が主な取引です。

トレーダーは「FXは店頭取引(つまり相対取引)である」ことを強く意識する必要があります。なぜなら、上場取引と異なり、業者から提示されるレートあるいは業者を通じて伝えられるレートは、FX業者によって異なるためです。

もちろん、業者の間で極端なレート差が発生することは稀です。もしそのような大きな差があれば、無裁定取引(アービトラージ)が可能であり、そのようなチャンスをすぐさまプロトレーダーたちが埋めにいくからです。

FXの取引例

1ドル=120円、レバレッジ20倍で取引する場合、60万円(5,000ドルに相当する円)を証拠金として預託すると、5,000ドル×20倍=10万ドルの取引が可能です。(つまり、証拠金は取引額の5%。)1ドル=120円のときに取引を開始し10万ドルを買い、その後、円高となって1ドル=115円になったとする。このときの収支は、

  • 1ドルあたり 115円-120円=-5円 であるので、10万ドルの取引では50万円の損失
  • 証拠金は 1ドル=120円のときに、5000ドルであるので60万円
  • 初めの証拠金60万円に対して50万円の損失を差し引くと、残るのは10万円だけであり投資資金は初めの1/6になる。投資リターンは10万円/60万円-1=-83%

上記と逆に、円安となって 1ドル=125円になった場合は、50万円の利益です。つまり、初めの証拠金の60万円が110万円となり、投資リターンは110万円/60万円-1=83%となります。

実際の取引では、相場の状況においてあるポイントで損切りを行い、1回あたりの取引における損失額を限定する必要があります。損切り時における一般的な損失額は1~3%、最大でも5%以内と言われています。上の例の場合、60万円×5%=3万円を損失額の上限とし、損切りまで5円の値幅を見込んだ場合には6,000ドルまでしか取引することができなません。60万円の資金に対して一度の取引で50万円を失う可能性のある取引はリスクが高すぎであり、行うべきではないことに注意する必要があります。

ディーラーの役割

ディーリングデスクとは?

国内の多くの業者では、顧客からの注文を取り次ぐ「ディーリングデスク」が設置されています。ディーラーとしての役割を果たすものであり、顧客へのレートを提示するなど非常に重要な役割を果たしています。

ディーリングデスクの役割や、DD方式とNDD方式の違いやメリットについては以下の記事もご覧ください。

>> DD方式とNDD方式の違いとは?

FXは社会に貢献している?

FXには様々な投資家や投機筋が参加しており、日本のFX市場では月間500兆円から600兆円もの取引がなされています。実は日本のFX市場では世界最大の市場となっています。

これだけ多くの取引が行われていることによりFX市場は為替市場に対しても大きな影響を及ぼしていると考えらています。実際、日本時間の朝8時から10時までの、プロの相場観からは想像しにくい価格の動きは多くの日本人トレーダーの取引によるものと考えられており、そのようなアマチュアトレーダーたちの総称である「ミセスワタナベ」という単語は世界中でよく知られています。

そのため、FXは為替市場の流動性を向上させる点で大きく貢献していると考えられています。

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