仮想通貨(暗号資産)とは?
仮想通貨とは以下の2点で定義づけられていると言えます。
- 暗号化され一定の決済能力を持つもの
- 法定通貨のように強制通用力を持たない、または特定の国家や地域による価値の裏付けのないもの
仮想通貨は、ネットクーポン・電子マネー等とは決済の限定性(片方向性)や、限定的な流通制・汎用性で区別されます。ただし「デジタル通貨」という単語では仮想通貨に加え、ネットクーポン・電子マネーを含めた意味でくくられることもあります。
仮想通貨(暗号資産)の法的位置づけ
日本では「資金決済による法律(資金決済法))により法的に定義されます。この法律は商品券やプリペイドカードなどの金券(電磁化された電子マネーを含む)と、銀行業以外による資金移動業について規定ものであり、仮想通貨の法的地位について国内で初めて明文化した法律です。
英語圏では「cryptocurrency(直訳すると暗号通貨)」と呼ばれ、日本でも「仮想通貨」として拡がりました。しかし、2018年の国際会議にて「crypto asset(直訳で暗号資産)」という単語が使われたことで、日本でも資金決済法にて「仮想通貨」は「暗号資産」と改称されることになっています。
暗号通貨は、暗号化を利用することでトランザクションを保護し、新しい通貨単位の作成を制御する仮想通貨です。すべての仮想通貨が暗号化を使用するわけではないため、すべての仮想通貨が暗号化通貨であるとは限りません。つまり仮想通貨は暗号通貨を含みますが、その逆は成り立ちません。
仮想通貨(暗号資産)の歴史
仮想通貨が注目されるようになったのは、暗号通貨「Bitcoin(BTC;ビットコイン)」の登場からです。それまでも仮想通貨の概念や試作的なものは存在していましたが、改ざんが容易であまりにもセキュリティ的に脆弱だったため、通貨として決済に利用することは実用上不可能でした。
暗号通貨として最も初期に登場し最も有名となったビットコインは、2009年に「Satoshi Nakamoto」を名乗る人物が発表した論文に基づき、実際の運用が開始されました。
仮想通貨の決済としては、2010年5月22日にアメリカでピザ2枚を10,000ビットコインによる支払いが成立したのが最初の商取引だといわれています。このことから5月22日は「ビットコイン・ピザ・デー」となっています。
2011年から2013年にかけてビットコイン価格は高騰し、注目されるようになりました。しかし、2013年、技術的欠陥により仮想通貨の基礎技術であるブロックチェーンが分岐してしまいます。以来、分岐したネットワークはそれぞれ別の取引履歴を持つようになりました。
また、ビットコインとは別に、同様の技術を用いた仮想通貨が登場し、今では少なくても600種類以上の仮想通貨が存在しているといわれています。また、その技術的特性から、メジャーな通貨については少しずつ用途の異なるものとして、棲み分けられています。
仮想通貨(暗号資産)の技術的要素
一般的に仮想通貨はPeer to Peer型のコンピューターネットワークにより運営されており、トランザクション(日本語では取引と直訳され、仮想通貨の所有権移転のこと)は仲介者が存在することなくユーザ間で直接行われます。このトランザクションはネットワークに参加しているノードによって検証され、「ブロックチェーン」と呼ばれる公開分散元帳に記録されていきます。
ここで出てきた「ブロックチェーン」こそが仮想通貨の根幹的な技術要素です。ブロックチェーンの特徴は、分散して管理されるという点が最大の特徴で、ビットコインなどを利用しているあらゆるユーザーのコンピューターに保存されます。銀行のような特定の管理機関がないため、権限が一箇所に集中することはありません。そのためシステム障害に強く、かつ低コストで金融サービスが運用できると期待されています。
ブロックチェーンの基本的な仕組み
ブロックチェーンは「分散」しており、ユーザー同士が管理しています。この形式を「Peer to Peer(P2P;ピアツーピア)方式」といい、「分散型取引台帳」とも呼ばれています。金融機関を介さず、ユーザー同士でシステムを管理し合う構造です。
ブロックチェーンは、複数のコンピューターで分散して管理されているため、ビットコインの各取引ごとのリアルタイム更新には対応できません。そのため、定期的に、例えば10分単位でまとめて承認作業が行われるという特徴があります。
ブロックは暗号化されている
トランザクション(取引)の履歴は「〇月×日、XからYへ、n BTCを送金した」という内容のデータが記録され「ブロック」を構成しています。このデータはオープン化されており、誰でも確認することができます。しかし、トランザクションの「具体的な取引内容」は、ハッシュ関数により「暗号化」されるという特徴があります。
ハッシュ関数とは、元となるデータから一定の文字数の不規則な文字列(ハッシュ値)を生成する関数です。同一のデータであれば同じハッシュ値が生成されますが、少しでも異なれば全く異なるハッシュ値が生成されます。また、生成された文字列から、元のデータを読み取ることができないという「不可逆性」を持っているのが特徴です。そのためハッシュ関数はセキュリティの様々な分野で利用されています。
ブロックデータには「ハッシュ関数によって暗号化されたトランザクション」と「直前のブロックデータのハッシュ値」が含まれています。直前のハッシュ値と、「ナンス値」という特別な数字を見つけ出すことで、全体の流れに整合性が取ることができ、ブロックがブロックチェーンへ新たに追加される流れを「承認」といいます。
新たな仮想通貨の生成:マイニング
新たにブロックを追加する際、「直前のブロックのハッシュ値」と「今回のブロックに含まれるトランザクション(全取引データ)」、そして「ナンス値」をハッシュ関数によって暗号化します。
この整合性を確認し「承認」するためにはコンピュータ上で膨大な計算が行われます。この承認作業は「マイニング(採掘)」と呼ばれ、不正が行われていないことを証明する仕組みを「proof of work(仕事の証明)」と呼んでいます。これを成功させた人にビットコインの報酬が支払われるという仕組みがあり、このときビットコインが「新規発行」されるのです。
ビットコインの発行総量は事前に決められており、2140年までに上限数である2,100万ビットコインに達すると言われています。「マイニング」というブロックチェーンが生まれる仕組みによって、ビットコインは急激な増減が起きないよう調整がなされているのです。
ブロックチェーンのメリット
ブロックチェーンのメリットは、ブロックチェーンとして一度記録された情報は改ざんができないという点です。
仮想通貨「ビットコイン」では、この特徴を取引履歴の記録に活用することで、改ざんされない信頼性の高い台帳を実現しています。
そして、ブロックチェーンは自律分散システムであり、その信頼性は「運営事業者に対する信頼による担保」ではなく、「ブロックチェーンという仕組みにより担保」することができるのです。つまり、特定事業者によらない、透明性の高い台帳を複数の事業者や不特定多数と共有することが可能となります。
この台帳を活用し、契約内容をブロックチェーンで管理する「スマートコントラクト」の実現が期待されています。契約の成立に必要な条件を改ざん不可能なブロックチェーン上に記録し、その条件を満たした時に自動執行されるというものなのです。
スマートコントラクトの利用により、事前に定義した条件に従い厳格に契約が執行されるため、契約で互いの信頼関係や第三者の仲介が不要となり、見知らぬ相手とも直接安全な取引が可能となります。これにより、契約にかかる時間の短縮や、仲介者を介さないことによるコスト削減が実現できるようになるのです。