リスクを取らずに確実なリターンを得る方法が裁定取引(アービトラージ)です。多くのヘッジファンドが狙っているアービトラージは仮想通貨の世界でも可能です。しかしその詳細を知る人はなかなかいません。ここでは仮想通貨アービトラージの手法を見ていきましょう。
アービトラージとは?
本来のアービトラージとは「リスクを取らずに確実にリターンを得る取引」のことです。日本語では「裁定取引」として知られています。金融工学や経済学における学問的な説明では、市場は「ノーフリーランチ」、つまり市場が効率的であるためにそのようなただ飯が存在しない(無裁定)という前提であるため、多くの人は無リスクで確実にリターンを得ることができないと誤解しています。
実際にはヘッジファンドをはじめ多くのプロトレーダーがそのようなアービトラージを実現しており、多額の利益を獲得しているのです。プロトレーダーでなくても、市場をよく観察していれば、アービトラージの機会が無数に存在することを見いだすことができ、それを見つけた人はそこから利益を獲得しています。
しかし、「ただ飯」はいつまでも存在している訳ではなく、それを見つけた人がすぐさま飛びつき利益を獲得することで、消失してしまいます。
そのような背景もあり、「わずかなリスクをとり、十分に高い確率でリターンを得る取引」を広義のアービトラージとして捉えることがあります。仮想通貨の世界では、この広い意味・文脈で「アービトラージ」として呼称されることが一般的です。
アービトラージの特徴
メリット
仮想通貨の世界において、アービトラージには以下のメリットがあると考えられます。
- リスクが少ない
- 収益機会があればいつでも利益をあげられる
- 前提となる知識が少ない
まず、アービトラージはその取引故にリスクがない、または非常に低いという特徴があります。仮想通貨は数時間で20%以上価格が変動することもあり、ポジションを保有し続けることはリスクが非常に高いと言えます。アービトラージは取引行動を行う時点で利益がほぼ確定するため、このような大きな価格変動リスクに過度に晒されることを回避することができます。
ただし、取引手法によっては「テールリスク」と呼ばれる、非常に小さい確率で損失が発生してしまうことがある点には注意が必要です。
2点目の特徴は、その収益機会です。アービトラージは後で説明するように、何らかな市場の不均衡を収益の源泉とします。そのため、そのような収益源泉を見出せばいつでも取引機会があると言えます。
3点目の特徴は、前提となる知識がそれほど少なくても可能である点です。例えば為替や株式を例にするとわかりやすいのですが、市場の大きな流れは社会の動きに影響されます。政治、貿易、資源、紛争問題など、どのような問題が社会に存在しており、そのような状況の変化がどのように市場へ影響を与えるかについては、一朝一夕で知識を得られるものではありません。仮想通貨の市場も、実は社会の動きに大きく影響されています。
アービトラージではこのような経済に関する知識を持っていなくても行うことが可能です。どこにアービトラージのチャンスがあるか、それをどのように見つけるか、そしてどのように利益を実現するかさえ知っていれば、アービトラージを狙うことは可能なのです。
デメリット
仮想通貨の世界において、アービトラージには以下のデメリットがあると考えられます。
- 収益単価が少ない
- 収益機会を常に探し続ける必要がある
- スピードの勝負となる
- 主観の混在を排除しきれない
デメリットの1点目は、その収益単価が少ないということです。仮想通貨に限らず、アービトラージは一般的に単位あたりの収益は大きくありません。
例えば株価指数先物を使ったアービトラージでは、およそ2万円に対して数円から10円程度の利益が上がる程度です。そのリターンはおよそ0.01%から0.05%です。仮想通貨でも1回の取引で0.01%あればよい方です。
そのため一般的なヘッジファンドでは大きな収益を得るために、1回の取引金額を増やし、より多くのアービトラージの機会を狙っていくという戦略をとっています。
2点目のデメリットは、収益機会を探し続ける必要があるということです。アービトラージの機会はどこにでも転がっているわけではなく、そのチャンスを探さなければ見つけることができません。
3点目のデメリットは、最終的にはスピード勝負となる点です。もしアービトラージの機会が見つかれば多くの人がそれを狙います。そのため、アービトラージで収益を上げるためには、とにかく早く取引を行わなければなりません。
4点目のデメリットは、人間の主観でアービトラージに失敗する可能性がある点です。アービトラージでは取引開始時点で収益を上げることがほぼ確定しますが、実際に利益が実現するまでに時間的なラグがあることも多いです。
例えばアービトラージのために最初の取引を行った段階で「実は普通にポジションを保有し続けることで、アービトラージよりも多くの利益をあげられるのではないか?」と考えてしまうことも、人間ならではです。そのような雑念がアービトラージの実現を妨げてしまい、結果的にアービトラージに失敗してしまうのです。しかも、そのようなときには余計な欲が出てしまい、取引で損が出てしまうということが大半です。
なぜアービトラージが可能なのか?
アービトラージがなぜ可能であるのかを理解することは、どこでアービトラージが発生するかを見出す上で極めて重要です。
アービトラージが可能となる状況が発生する原因は以下の2点に集約されると考えられます。
業者間の価格差を利用した裁定取引

アービトラージが可能となる1つ目の原因は、業者間で仮想通貨の価格に差が発生することです。
これは同じ商品の価格が、取引する市場が異なることで異なる価格となっている状況、つまり「一物一価の原則」が破れた状況となることで発生しています。アービトラージと言えば、この価格差により利益をあげる取引がイメージしやすいかと思います。
仮想通貨の市場は大きく販売所と取引所に分けることができますが、いずれも仮想通貨を取り扱う業者ごとに独立しており市場が分断されています。そのため、業者の人気度や取引量などに応じて、同じ仮想通貨であっても異なる価格で取引が行われます。
例えば、業者Aでは600,000円で1BTCを購入できるにも関わらず、業者Bでは601,000で売却できるという状況を見つけることができれば、業者Aの口座から業者Bの口座へビットコインを送金し業者Bで売却が完了すれば、アービトラージで1,000円の利益を獲得できる可能性があるということです。
通貨間の価格不均衡を利用した裁定取引

アービトラージが可能となるもう1つ目の原因は、仮想通貨の種類の間で価格に不均衡が発生することです。
これは市場に関わらず、複数の通貨間の価格付けに不均衡が発生している状況であると言えます。つまり「均衡レートの関係」が破れた状況となることで発生しています。先程の業者間アービトラージに比べるとやや高度な手法であると言えます。
為替市場で例えると、米ドル/日本円の為替レートとユーロ/日本円の為替レートがわかれば、この2つのレートを使うことでユーロ/米ドルの為替レートは理論上算出できるものであるはずです。もしそうでなければ、日本円で米ドルを購入し、米ドルでユーロを購入し、ユーロで日本円を購入するというように、3つの取引を組み合わせることで確実に利益をあげることができてしまいます。
仮想通貨の世界ではビットコイン(BTC)が絶対的な地位を有しており、アルトコイン(BTC以外の仮想通貨)をビットコインで購入することができます。そのため、価格の不均衡を見つけることができれば、日本円でビットコインを購入し、ビットコインでアルトコインを購入し、アルトコインを売却し日本円にするというように、確実に利益をあげることができるのです。
アービトラージを妨げる要因
ここまでの説明で、どのように仮想通貨でアービトラージが可能になるか理解できたかと思います。
しかし、アービトラージの機会を見つけたとしても、本当に実現することが可能なのか、実現しないとすればどのような原因があるか知る必要があります。その原因として以下の2つが挙げられます。
- 手数料の存在
- 短時間での大きな価格変動
手数料の存在
アービトラージを妨げる1つ目の要因が、取引時に手数料が発生するという点です。仮想通貨でアービトラージを行う場合、以下の取引に手数料がかかります。
- 購入:取引手数料
- 売却:取引手数料
- 送金:送金手数料
手数料(コスト)の存在は利益を押し下げる要因となります。さらに、取引にかかる手数料(コスト)がアービトラージで得られる利益よりも大きい場合、取引全体では損失となってしまいます。
短時間での大きな価格変動
アービトラージを妨げる2つ目の要因が、短時間に大きな価格変動が発生しうるという点です。仮想通貨の価格変動は、為替や株式と比較してもかなり大きいものとなっています。
これまでの説明からわかるように、アービトラージが実現するためには少なくても2つ以上の取引を行う必要があります。これらの取引を行う間に大きな価格変動が発生した場合、想定していた取引を行うことができないという事象が発生します。
特に、異なる業者へ仮想通貨を送金する場合、数分から10分程度の時間を要することもあります。アービトラージではわずかな金額差で利益を狙うものですから、相場変動が大きい局面ではこの時間差が致命的となることもあります。
アービトラージの実践と自動売買
アービトラージを実践するには
アービトラージを行うためには「様々な業者の価格をチェックする」「利益と手数料を比較する」「素早く注文や送金指示を行う」といったプロセスが必要です。それさえ行えば、アービトラージが可能なのですが、仮想通貨の価格は常に変動していますから、人力でチェックし続けることはほぼ不可能です。
そのためアービトラージのためには、何らかの方法でプロセスを自動化することが必要となります。
利用できる業者
取引を自動化して行うためには、業者側でAPI(Application Programming Interface)の利用に対応している必要があります。
APIへの対応については、以下に挙げるような業者はAPIを使って取引等を行うことが可能です。どの業者も今なら無料で口座開設をすることが可能ですから、より多くの業者で口座を開設しておき、アービトラージの可能性を最大化すべきであると言えます。
- bitbank
- bitFlyer
- BITPoint
- BTCBOX
- Coincheck
- DeCurret
- GMOコイン
- Huobi Japan
- Liquid by Quoine
- OKCoinJapan
- Zaif Exchange
特に「Coincheck」はビットコイン現物の取引所取引が手数料無料ですから、この機会にぜひ口座を開設しておくことをおすすめします。
自動売買活用のメリット
自動売買のメリットは人力で不可能なプロセスを行うだけではありません。自動売買を行うことで、デメリットで挙げた「人の感情によりアービトラージが妨げられる」という可能性を排除することができます。
実際に自動売買を行う上で、必要となる知識や手法については以下の記事で紹介していますので、参考にしてみてください。